長門有希の体験シリーズ
序章




 そこは文芸部部室。
 パソコンの画面に、不思議な文字が浮かび上がっていた。




 YUKI.N>これは緊急脱出プログラムである。起動させる場合はエンターキーを、そうでない場合はそれ以外のキーを選択せよ。起動させた場合、あなたは時空修正の機会を得る。ただし成功は保障できない。また帰還の保障もできない。


 YUKI.N>このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。非実行が選択された場合は起動せずに消去される。Ready?




 誰かの指がキーを選択するべく、動いた。
 その人差し指がエンターキーに触れたが、押さない。
 悩んでいる風にも、名残を惜しんでいるようにも見える。
 やがて指先が、キーボードの上をゆっくりと移動した。
 指先はキーボード上で唯一、何も書かれていないキーで落ち着く。
 未練を断ち切ったのか、それとも『それ』を本気で決めたのか。
 指先が、躊躇い無くスペースキーを押す。
 その場にいた全員の視界が光に包まれた。








 そして世界は安定する。
 宇宙人も、未来人も、超能力者もいない世界に。










『序章(兼設定)』終
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