長門有希の体験シリーズ
決して完璧ではないけれど




 SOS団団長、涼宮ハルヒの発案により、わたしたちは山へピクニックにやって来ていた。


 名目上は「人が入ってこない山奥でこの世の不思議を探そう!」とのことだったが、いまわたしたちが上っているのはごく普通のハイキングコース。
 もちろん人通りもあるし、この世の不思議が見つかるとは思えない。
 要するに、涼宮ハルヒは山遊びをしたいだけのようだ。これは彼の言葉。
 実際先頭を切って歩く涼宮ハルヒは実に楽しそうだ。
 続く朝比奈みくるは体力的にかなり辛そうに見える。
 その次に続く古泉一樹はそれほど疲れてはいないよう。
 古泉一樹のあとに続くわたしは体力がないからかなり疲労していた。
 道はそれほど急勾配ではない。でも、ほとんど運動をしたことがないわたしにとっては辛い道のりだった。
 立ち止まり、膝に手を置いて呼吸を整える。
「おい、大丈夫か? 長門」
 最後尾を務めていた彼がわたしに追いつき、そう声をかけてくれた。
 心配そうな顔をしている。
 彼を心配させてはいけないと思い、体を起こして頷く。
「だい、大丈夫」
 一瞬言い損なったけど、大丈夫だという意志は伝わったはず。
 なおも心配そうな顔をしている彼を安心させるため、わたしは足を進めた。
 あまり彼に頼ってばかりではいけない。
 彼だって疲れているに違いないのだ。彼は確かにわたしよりは体力があるけど、スポーツマンというわけではない。特にここ数カ月はわたしに付き合って部室で本を読む日々……体力だって落ちているに違いない。
 そんな彼に負担をかけるのは、わたし自身が許せない。
 極力減らした荷物も、最初彼は持とうかと言ってくれたけど、断って自分で持っていた。
 彼に負担をかけないよう、わたしは自分の力を振り絞る。








「さて! そろそろ休憩にしましょうか!」
 休憩所として開放されている小屋の前で、涼宮ハルヒが宣言し、ようやく一息つくことになった。
 山の中にあるために落ち葉や何やらで汚れている小屋――と言っても壁はなく、天井と座る場所だけがある簡易休息所と言えるものだが――を古泉一樹と彼が率先して掃除して、綺麗にしてくれる。
「どうぞ、涼宮さん、朝比奈さん」
「長門。もう座って大丈夫だぞ」
 軽く礼を言いながら、楽しそうに座る涼宮ハルヒ。早速荷物の中から地図を取り出し、現在どのあたりまできたのか確認している。
 わたしと朝比奈みくるにはそんな余裕はなく、ほとんど崩れるようにして座り込む。
 二人して呼吸を整えていると、わたしたちの前にそれぞれコップが差し出された。
「どうぞ。朝比奈さん」
「す、すいません。ありがとうございます」
「これ飲め、長門」
 古泉一樹からお茶を受け取った朝比奈みくるは、慌ててお礼を言った。
 わたしも彼を見上げて、言う。
「…………ありがとう」
「気にすんな」
 彼はそれだけ言うと、地図を広げている涼宮ハルヒに近づいていった。
 楽しそうに地図を指し示す涼宮ハルヒに、いかにも適当な生返事を返している。
 にこにこと笑いながら楽しそうに聴いている古泉一樹とはかなり態度が違った。
 わたしがその様子を見ながら彼に渡されたコップのお茶をゆっくり飲んでいると――隣から何やら手が伸びてきた。
 驚いてそちらに目をやる。
 すると、朝比奈みくるがわたしに何か差し出していた。
「えっと……長門さん、よかったらどうぞ」
 差し出されていた手を見ると、飴玉らしきものがその手の上に乗っていた。
 とても綺麗な色をした、飴玉。
 突然だったのでどうしたらいいのかわからず、固まってしまう。
 すると朝比奈みくるはどう感じたのか、慌てた様子で手を引っ込めた。
「す、すいません、迷惑でしたか……?」
 違う。
 そうじゃない。
 意思を伝えようと、首を横に振る。
「迷惑、じゃない…………もらう」
 自分から手を伸ばして、朝比奈みくるの手の上にあった飴玉を取った。
 朝比奈みくるは一瞬驚いたような顔をした。
 けど、すぐにほっとしたような笑顔を浮かべる。
「そうですか」
 なんとか誤解されずに済んだみたいだ。
 わたしはほっと一息を吐く。
 どうやらわたしは誤解されやすいようだから、気をつけるようにしたいと思っている。
 その決意が、少しだけ達成できたような気がして、安心した。
「良かったな、長門」
 心の中を読まれたような言葉がかけられて、驚いた。
 目線を向けると、彼が優しげな笑みを浮かべてわたしを見ている。
 彼はわかっていたようだ。
 自分の思考が理解されていた、という喜びと気恥かしさでどうしたらいいのかわからなくなる。
 顔を俯かせることしか出来なかった。
 それから暫くして、
「さあ! そろそろ出発するわよ! あと半分くらいで目的の広場につくから、頑張りなさい!!」
 そんな涼宮ハルヒの号令がかかり、わたしたちは再びハイキングコースを登り始める。








 周囲を深い茂みが覆っていて、視界が悪いところを歩いていた時のこと。
 比較的平たんな道だったため、少し楽に歩を進められていた。
 相変わらず先頭を切る涼宮ハルヒが、慌てた様子で朝比奈みくるを連れて下がってきたのはそんな道でのことだった。
「どうしました?」
 前から三番目を歩く古泉一樹が突然下がってきた涼宮ハルヒと朝比奈みくるにそう尋ねる。
 涼宮ハルヒは少し焦った感じの声で言う。
「イノシシがいるのよ! ほら!」
 前方を指さす涼宮ハルヒ。
 つられて指さす方向を見ると――いた。
 道のど真ん中でなにやら地面の匂いを嗅いでいるように見える。
 結構大きい。
「刺激しなければ大丈夫ですよ」
 古泉一樹はそう言いながらも、女子二人の前に出て庇う位置に移動する。
 そんな古泉一樹に、わたしの後ろから声がかけられた。
「古泉。これを」
 声に応じて振り返った古泉一樹。わたしや涼宮ハルヒたちの頭の上を、何かが飛んだ。
 古泉一樹がその何かを受け取る。
「これは……」
 投げられたそれは、何かのお菓子のように見えた。
 それを投げて渡した彼はイノシシを刺激しないためか、少し小さな声で説明する。
「対抗策って奴だ。万が一の時はそれを使え」
 言いながら彼はわたしの隣に立つ。
「……どうやって使えと?」
「向こうがこっちに気付かないまま去るなら放っておいていいが、万一こっちに向かってきそうだったら、それを投げて気を引くんだ。そしてそれをイノシシが食べている間に逃げる」
 古泉一樹は「わかりました」と頷き、それを持って樹の影からイノシシを観察しているようだ。
「この辺りにいるイノシシは、餌付けされているらしくてな」
 彼がそんなことを言った。
 彼の横顔を見上げると、彼は真剣な表情で古泉一樹の背中を見つめている。
「野生動物っていうのは実は臆病なもので、人の気配を察したら普通は逃げていく。だけどこのあたりのイノシシは人に慣れてて、登山客の荷物とかを狙って襲ってくることもあるらしい。まともに相手したら命がいくつあっても足りないし、荷物を放棄するもの嫌だろ? だから万が一の時はあれを囮にして、逃げるぞ」
 なるほど。
 彼の横顔がすごく頼もしく見えた。
 見つめているわたしの視線に気づいた彼が、照れくさそうに言う。
「山に行くって決まった時、一応色々調べたんだよ。特に春は色々活発化して危ないしな」
 すごい。
 わたしは山に登ると言われて、どんなことになるんだろうと不安に思っていただけだったのに……彼はきちんと対策を立てていたらしい。
 やはり、彼はすごい。
「……どうやら、逃げてくれたようです」
 ほっとした様子の古泉一樹が、そう言った。SOS団全員に安堵の空気が流れる。
 投げ渡されたお菓子を彼に返しながら、古泉一樹が言った。
「そういえば……お菓子を囮に使うという発想はいいのですが、そのお菓子、ビニール袋か何かに包んでおいた方が良かったのでは?」
「どういう意味だ? 古泉」
「この匂いに惹かれてこっちに来る可能性もあったと思うのですが。幸い風下だったので大丈夫でしたけどね」
「…………それもそうだな。すまん。それは考えてなかった」
「なにそれ。ちょっと抜けてるわね。さすがジョン」
 なにがさすが、なのだろう。
 彼も同じように感じたらしく、憮然としていた。 
 再び先頭に立った涼宮ハルヒが、元気よく前の道を指し示す。
「ちょっと邪魔が入っちゃったけど……目的地まではあと少しよ! 気合い入れて行きましょう!」
 それ以降は特に何事もなく、わたしたちは目的地である広場にたどり着いた。








 その広場は山の頂上付近にあるとは思えないほど広く、山の上にあるからこその景色が奇麗だった。
 他にもたくさんの人がいるし、お弁当屋もあるほどきちんと整備された場所。
 さすがは登山で有名な山なだけはある。
 涼宮ハルヒが一番見晴らしのいいところに陣取りながら宣言した。
「それじゃあ、お弁当タイムね! 時間は……ちょっと予定より遅いくらいだけど、お腹が減っててちょうどいいわ」
 確かに。慣れない運動をしたせいかもしれないけど、もうお腹はぺこぺこだった。
 この広場に到達する直前には、結構大きな音でお腹が鳴って、後ろにいる彼に聞こえていないか心配になったくらいだ。
 古泉一樹と彼がシートを敷いていく。
 その上に手際よく涼宮ハルヒが弁当箱を並べていった。
「さ、女子合同で作ったお弁当よ。遠慮なく食べなさい!」
「合同で?」
 彼が少し驚いたような声をあげた。それに応えて涼宮ハルヒが頷く。
「そうよ。昨日、皆で有希ちゃんの家に集まって色々仕込みをして頑張ったんだから! 心して食べなさいよ!」
 言いながら、なぜか涼宮ハルヒは彼に対して目で合図を送っているようだった。合図の意図がわからない。
「なるほど。それで昨日は不思議探索はなかったのですね」
 古泉一樹は妙に納得した風情で何度も頷いている。
「……三人でか?」
「そうよ。当たり前じゃないの」
 咎めるような目線を彼に向ける涼宮ハルヒ。
 彼は少しの間、何かを考えていたようだったけど、やがて何かを納得したかのように頷いた。
「ああ、わかった。それじゃ、ありがたく頂こうか」
「そうよ、ありがたく思いなさい! あたしたちにお弁当を作ってもらえるなんて、この上ない名誉だわ!」
「お前はどれだけ偉いんだよ……」
「SOS団の団長だもの! 偉いわよ!」
 コントのようなやり取りののち、お弁当タイムとなった。
 お弁当が開かれ、色とりどりの料理が広げられる。そのお弁当を囲むようにしてわたしたちは腰をおろした。
 料理を見た男子二人が快哉をあげる。
「すげえな……」
「これほどとは思いませんでした。どれも素晴らしい出来で美味しそうです」
 さすがは涼宮さんですね、と古泉一樹は彼女を持ち上げる。彼女は得意そうにその胸を逸らした。
「あたしたちが作ったんだから当然よ! さ、食べるわよ!」
 それぞれ箸を取り、好きな料理を取って食べ始めた。
 空腹だったこともあるのだろうけど、どの料理も味見をしたときの何倍も美味しかった。
 食べながら、わたしはこっそりと彼の様子を伺う。
 料理を食べた彼の評価が気になったのだ。かといって正面から訊く勇気もなかったわたしは食べた彼の反応を見て判断しようと思ったのだけど……。


 目が合った。


 なぜか彼はこちらを見ていた。
 驚いて固まるわたしに、彼が声をかけてくれる。
「長門も作ったんだよな。……怪我とかはしてないよな?」
 わたしの指先を見ながら彼は言う。
 彼にはわたしが毎日ろくな物を食べてないということを――つまりはコンビニの弁当や総菜で済ませていることを――知られている。
 料理などほとんどしたことがなかったから、彼の懸念はもっともだった。
 とりあえず怪我はしていなかったので頷いて彼の質問に答えた。大体、いくら不器用でも、いくら不慣れでも、マンガのように指先が例外なく包帯でぐるぐる巻きになるようなことには、現実的にはならない。
 彼は一つ溜息を吐く。
 それは諦めや呆れの溜息ではなく、安心や安堵の溜息だった。
「そうか。――長門が作ったのはどれだ?」
 その問いに、わたしはまた固まることになった。
 作ったも何も、実のところわたしは二人のサポート役だった。
 料理にさえもそのオールラウンダーな能力を発揮する涼宮ハルヒと、料理が得意だという朝比奈みくる。
 その二人に比すればわたしなど足手まといでしかない。
 だからほとんど重要な部分には参加していないのが実際のところだった。わたしがやったことといえば野菜を切ったり、鍋の火を見ていたり、言われるままに調味料などを渡したり……くらい。
 だから『わたしが作った』と言えるようなものはほとんどなくて――。
 だけど彼が妙に期待しているようだったので、何も言わないわけにもいかず、何も示さないわけにもいかず、とっさにわたしはある一つの料理を指さした。
 その料理とは、お弁当の中で最も基本的な料理――火も包丁も使わない唯の――おにぎりだった。
 料理と呼べるのか疑問なくらいのものだったけど、残念なことに『わたしが作った』と言えるものはそれしかない。
「これか?」
 そう言って彼がわたしの示したおにぎりを見る。
 ……示してから後悔した。
 おにぎり、というものは実に単純なもので、単純だからこそ熟練度がはっきり出てしまう。
 事実、いくつか並べられたおにぎりの中で、わたしが手掛けたおにぎりは――悪い意味で――明らか。
 ある程度形は整っているけど、その隣にある完璧な形(涼宮ハルヒ作)のものと比べれば不格好と呼べるレベルだった。
 やっぱり示さなければよかった。すでに彼にはわたしが料理が出来ないことも知られているとはいえ、わざわざ無様な料理を示すくらいなら、最初から『サポートに徹した』としておいた方がよかったかもしれない。
 しかし時すでに遅し。
 彼はおにぎりを手に――それも形の悪い、つまりわたしが握ったものを――取り、ぱくり、と食べてしまった。
 一瞬、彼の眉がぴくりと動く。
「……塩っ辛いな」
 彼がそう小さく呟くのが聞こえてきた。
 そういえば塩の適量がわからなかったため、付けすぎてしまったかもしれない。
 焦ったけど、次に彼が口にしたのは意外な言葉だった。
「でも、疲れてるときには丁度いいな。ひょっとして予測してたのか?」
 その言葉を聞いた涼宮ハルヒがおにぎりをつまんで口に入れる。
「あら、ほんとね。塩が利いてて美味しいじゃない」
 ちょっと掴み所のない笑みを浮かべた古泉一樹が、わたしの方を見ながら言った。
「さすがは長門さんですね」
 明らかに持ち上げてくれているのがわかるセリフだった。
 そんな予測は立てていなかったのに……。どう反応したらよいのか困ってしまって、結局何も言えない。
 彼がもう一個おにぎりを手に取る。
「うん、美味い」
 そう言って彼は笑顔を向けてくれた。
 それだけでわたしにはもう十分すぎる。
 あまりに気恥かしくて、わたしはほとんど顔を上げていられなかった。








 弁当を食べた後。
 食べ終わってすぐに運動するのはよくないとの古泉一樹の意見から、わたしたちSOS団は広場でしばらく休むことになった。
 各々、違う場所からの景色を見に行ったり、シートの上で休んだりと思い思いに過ごしていた。
 わたしは食べたばかりで動く気がせず、シートに座ってお茶をのんびりと飲んでいた。(ちなみに飲んでいるのは朝比奈みくるが入れてくれたお茶で、とても美味しい)
 わたしは普段、こういう風に時間が空いたら本を読むようにしているが、さすがに山登りをするのにかさばる本は持ってきていない。
 代わりに本では見れない自然の景色を眺めた。
 広がる景色は、どこまでも雄大で、こうしてSOS団の活動に参加していてよかったと思う。一人なら絶対に来ない類の場所だから。
 最初のころは戸惑うことが多かったけど、慣れれば彼女たちといるのも楽しい。――なにより彼がいる。
 思わずそう思ってしまい、周囲にはわからないとわかっていたけど慌てた。
 そっと周囲を窺ってみたけど、幸い誰も気づいていないようだった。
 ほっとしながら、改めて周囲を見渡す。
 さすがに春だけあって緑は青々としていた。もちろん登っている時から気づいてはいたけど、こうしてゆっくり休みながら見るのでは印象が違う。
 ふと、すぐ近くの茂みの辺りで綺麗な花が咲いていることに気づいた。
 花の形から見るに、ユリのようだけど……。
 もう少し詳しく見ようとそれを見つめていたら、突然背後から声がかけられた。
「長門。それはササユリっていうみたいだな」
 驚いて振り返ると、彼が一冊の本を広げていた。
「ほら、葉っぱが笹みたいだろ? だからササユリっていうだってさ。六月くらいに咲く花みたいだけど……今年はちょっと咲くのが早いのか?」
 野草に関連する本らしい。彼はそれを見ながら話していた。
 花のことを知れたのは嬉しいし、彼に感謝するけど、かさばる本をわざわざ持ってきていたのだろうか?
 その疑問が顔に出たのか、彼は苦笑しながら本を閉じた。
「覚えられたらよかったんだけどな。そんな頭いいわけじゃないから、本を持ってこないとわからなくってさ」
 荷物が重くなると自覚しつつも、持ってきたのだという。
「こういう場所に登るんだから、花とか見る機会もあると思ってな。そんなとき、花の名前とかわかったら楽しいだろ?」
 彼の言う通りだと思う。
 その向学心の高さに感心した。なんでそれなのに成績は良くないのだろう。不思議。……と考えるのは失礼だろうか。
 こっそり首を傾げていると、彼は本をめくりながら呟いた。
「長門は山登り初めてだろうしな……少しでも楽しくなれば……」
 その呟きを聞いてしまったわたしは、思わず耳を疑った。
 ひょっとして…………彼はわたしのためにわざわざ本を持って来てくれたのだろうか?
 荷物が重くなるのに?
 呆然とわたしが彼を見つめていると、横から涼宮ハルヒが割り込んできた。
「なに? なに持ってんのジョン。……野草の本?」
「ああ。使えるかと思ってな」
「あんたこれくらい覚えてこれなかったの? わざわざ荷物重くしてさ……」
「仕方ないだろ。俺はそんなに記憶力は……」
 二人が話すのを聞きながら、わたしは花に――ササユリに――目を戻した。
 彼は確かに完璧ではない。
 天才でもなければ、超人でもない。
 至って普通の一般人だ。
 だけど――。


 決して、完璧ではないけれど。


 彼と一緒にいれて――彼が一緒にいてくれて――良かったと思う。


 涼宮ハルヒと言い合っている彼を見ながら、わたしはそう思った。









『決して完璧ではないけれど』終
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