『長門有希ちゃんの消失』 一巻 書評
『23〜26P』編
<今回の一言>

『絶賛ラブコメ中のところ悪いんだけどー』 by朝倉涼子



 第一話の続きで、帰路の会話が続いています。
 「ターキーが必要」という長門は、原作での大食い設定が活きています。
 じゅるり、と涎まで垂らすのはどうかな、とは思うのですが、それもまたこの消失長門の魅力と言えるでしょう。
 原作の長門も大食いですが、美味しそうな物を想像して涎垂らしたりしませんからね。
 少し気になったのですが、「パーティーと言えばターキー」という長門は一体どこでそういう知識を得たのでしょう?
 ゲーマー設定であることを考えると、ゲームの中で出ていたから、というのが一番あり得そうでしょうか。

 男子と並んで歩く中、ふとした拍子に手が触れ合い、慌てる女の子……。
 うん。
 まさに「絶賛ラブコメ中」ですな(笑)。
 ドキドキしつつ、涙ぐんでいる長門の表情がいいですね。
 しかし、キョンの方はあまり焦っていない様子。確かに突然隣を歩いている女の子が「わひゃあっ!」とか叫んだらまずそちらの方が気になりますが(笑)。
 キョンが慌てないのは、妹がいることで身体的接触に免疫があるからかもしれませんね。
 第一話で部室を出る際、照れていたのは真っ直ぐお礼を言われたことに対して、であって、この段階でのキョンは長門に対して特別な想いは抱いていないのかもしれません。

 そして突然現れてラブコメ空気をブレイクする朝倉涼子!
 「うっふふー」と笑う朝倉さんは悪い笑顔を浮かべています。この時、朝倉は指で長門の頬を突いていますが……両手に持っていたはずの荷物(後にキョンの両手が渡された荷物で塞がったこと・朝倉が両手を温めていたことなどから、本来朝倉も両手がふさがっていたはず)は片手で持っているのでしょうか。
 背後から声をかけるだけでも良かったでしょうに、わざわざ重い荷物を片手で持ってまで、長門の頬を突いた朝倉の行動は、いかに長門との距離が近いかを示しているような気がします。
 声も出ないほどにうろたえる長門が可愛いです。二コマ目では片手を振りあげてまで抗議しようとしているのですが、朝倉にガンスルーされているのがまた何とも(笑)。

 朝倉から荷物を受け取るキョンが「あいよ」と軽い感じで引き受けている辺り、普通にキョンがいい人であるのがわかりますね。
 こういう些細なところに、人の良さというのは滲み出るものなのです。
 朝倉はそんなキョンに対し、残酷な仕打ちをするのですが(笑)。
 荷物で塞がったキョンの両手を見た朝倉は、キョンの頬に両手を当て暖を取ります。これ、実際やられたら結構きついです。
 同年代の女の子に触れられる――というのはキョンにとってさほど悪い感触ではないでしょうが、この場合それを上回るデメリットがありますからね。
 「抵抗しちゃだめよ? 卵が入ってるから」とキョンの抵抗を封じる朝倉には策士の才能がありそうです(笑)。

 戯れる二人を、長門は何とも微妙な表情で見つめています。長門の方を振りかえった朝倉は「クスッ」っと悪い笑みを浮かべて見せて……。このシーンだけを切り取ると、キョンを巡って長門と朝倉が火花を散らしているようにも見えますね(笑)。
 もちろん、そんなことはなく。
 次のページで朝倉は「隙あらばコレくらい積極的にいかなきゃだめよ!」と目を光らせ、長門は長門で「す、凄い高等テクニック…!」と羨望の眼差しを輝かせてます。
 ほんとにこの二人は仲がいいですね。
 あっさりキョンの頬から手を離し、「手も温まったし急いで帰りましょ」とテコテコ歩き始める朝倉。
 長門も「うん師匠」などとキョンに容易く触れる朝倉を敬う発現をしながらついて行きます。

 置いてかれたキョンがちょっと可哀想にすらなってきますね。それでもさほど怒っていない辺り、キョンって本当にいい奴ですよねえ(笑)。
 まあ、それくらいでもなければハルヒに付き合ってられなかったでしょうけど。

 長門の自宅は原作と変わらず、マンションのようです。
 原作から帰る理由もないですし、同じマンションでしょうね。

 今回はここまでです。


『長門有希ちゃんの消失』書評 『27〜29P』編 に続く
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