『長門有希ちゃんの消失』 一巻 書評
『27〜29P』編
<今回の一言>

『なんて言ったらいい……?』
by長門有希



 原作では単に口数が少ない長門ですが、消失では口下手設定がついています。
 実際、原作消失での長門も口下手らしい描写がいくつか見られました。

 もっとも、原作消失長門とこの消失長門ちゃんの『口下手』は少しベクトルが違うように思えます。
 いずれ『原作消失長門と消失長門ちゃんの違い』をきちんと考察してみたいものです。


 さて、本編感想は前回の続きから。
 クリスマスパーティを部室でやりたいと提案する長門。
 そしてあっさり朝倉に却下されてしまいます(笑)。

 『ダメでしょ』の部分が太字で表現されていることから、かなり強調されて言われたことがわかります。
 まあ、普通に考えて文化部の部室でパーティをやるというのはないでしょうね。
 高校の時、実際に文芸部に入部していましたが、打ち上げなどをする時には大抵学外の店を利用していました。
 自前で料理を用意する場合でも、食器やコップなどがあって、水や火が使える家の方が無難と言うのも理解できます。
 しかし、このページの二人の構図が完全に『無邪気な提案をする子供』と『常識的な返答をする親』そのものですね(笑)。

 二コマ目で長門が手を横に伸ばしているのは、両手が塞がっている朝倉の代わりにどこかのドアを開けているように見えます。そういうさりげない手伝いが微笑ましいです。
 でも台所から食事を食べるところ――この場合はキョンがいるであろう居間――に行くまでに扉があるってちょっと面倒ですよね。今回の朝倉みたいに料理を運ぶ時に両手がふさがることって多いでしょうし。
 長門の家の間取りはわからないですが、四コマ目の短い廊下を歩いているらしい朝倉の様子を見る限り、台所→廊下→居間といかなければならない間取りになっているようですね。
 アニメの設定資料集みたいなのがあれば、間取りがわかるのでしょうか。ちょっと探してみましょうかね……。

 夕食の内容はやはりおでんでした。裏表紙の時にも書きましたが、この設定は原作版消失の時のものを生かしていますね。
 一方、「ごはんよそいますよ」という朝倉に対して、直前まで机に突っ伏していたにも関わらず「いっぱいで」と即座に返すところから、この世界での長門は原作版消失長門とはかなり設定が異なることがわかります。(すでにその傾向は随所で見られますが)
 ちなみに原作版消失長門は「ちまちまとした食べ方で昆布を齧り終えるのに三分くらいかけていて」という描写からかなりの小食であることが窺えます。まあ、これはキョンが目の前にいたから、という解釈も出来るので本当に小食なのかはわかりませんが、描写だけを見る限りは小食であると思われます。

 なぜ部室でやるのにこだわっているのかを朝倉に聴かれた長門は、「なんて言ったらいい……?」と照れながら聞き返します。
 「そこ聞いちゃダメですね」と呆れつつ、「はいはいわかりました。長門さんの口下手も今に始まったことじゃないし……」と言う朝倉は本当に長門のことを理解しています。
 「ごはんたべてからにしましょ」と笑いながら言う朝倉と「なるほどそれは良い考え」と返す長門はほんと仲が良くて和みます。

 その下の枠外で苦笑しているキョンはそんな二人の仲に入れずちょっと寂しそうです。
 と、ここまで書いて気付きましたが、キョンと一緒に長門や朝倉は家に戻ってきているはずなんですよね。
 なのに、長門と朝倉が普段着になっている、ということは……ちょっと色々想像できませんか? エレベーターのところで普段着に着替えるため、一端自分の家に戻る朝倉と、長門と荷物を持ったキョンは別れたはずです。つまり、朝倉が自宅で着替えてやってくるまでの短い間とはいえ、長門とキョンは長門の自宅で二人きりだったということです! それを意識してドキドキしてる長門が目に浮かぶのですが(笑)。
 これがもう少し二人の関係が近づいた頃なら、ラブコメ的ハプニングの一つくらいありそうなシチュエーションです。

 さて、本編の感想に戻りましょう。
 キョンの台詞からすると、キョンが長門の家に来るたびにおでんのようです。
 でも、キョンが文芸部に入部したのは一週間ほど前で、なのに「ここに来るたびに」と言うセリフが出るということは、少なくとも二回以上は来ているということで……土日は学校がないので除外すると……五日中三日くらいは長門の家に来ているということになります。
 このキョン、マジで長門の家に入り浸っているんですけど(笑)。社交性が高いのでしょうね。

 私はほとんど料理をしない人間なので、『冬は大根が安い』→『よくおでんをする』になるのかはわかりませんが、おでんは温まりますし、色んな物をバランスよく取れそうですし(緑の野菜が摂り辛い気もしますが)、冬にする料理としては鉄板ではありますね。

 長門の服にからしが飛んでいることに気付いて注意する朝倉は本当に母親のようです。「落ち着いて食べないとダメじゃないですか」って台詞も母親っぽいですし。
 漫画的表現だとは思いますが、この服にからしが飛んでいるシーン、ちょっとからしが大きすぎじゃないでしょうか。これ飛んだっていうか、塊が零れたって感じなんですが(笑)。
 この規模でからしが飛ぶって、長門は器にどれだけからしを入れたのかが凄い気になります。

 今回はここまで。


『長門有希ちゃんの消失』書評 『30〜32P』編 に続く
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